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平成 21年 (行ケ) 10074号 審決取消請求事件
知的財産高等裁判所第2部(2009/10/20判決)

 原告 株式会社インテラセット  (商標権者)
 被告 インテル コーポレイション(審判請求人)

 主文 特許庁の審決を取り消す。
 以下、略

事案の概要

1.特許庁における経緯
(1)本件商標(商標権者:原告)
出願日 平成14年6月12日
登録第4651762号(平成15年3月7日設定登録)
指定商品: 第35類 

(2)無効審判(請求人:被告)
審判請求日:平成20年3月6日
審 決 日:平成21年2月10日
審決の結論:本件商標の登録を無効とする

2.審決の理由(要旨)
本件商標は被告の著名な略称を含む商標であり、その出願に当たり被告の承諾を得たものと認めることもできないから、商標法第4条1項8号に該当する、というもの。

3.当事者の主張
〔原告の主張〕
法4条1項8号該当性について

(1)法の趣旨:人格的利益を保護することにある。

(2)「著名」について:当該特定人の人格的利益を害するに至るか否かの観点から個別的に判断されるべきである。被告の著名性の内容は、マイクロプロセッサの開発・製造を行う企業としての認知であるので、本件商標がその指定商品に使用された場合に被告の「人格的利益を害するに至る性質のもの」に足る著名性を有するとは言えない。よって同号にいう「著名」の要件を満たさない。

(3)「含む」について:物理的に「包含する」という意味で形式的に捉えるのは適切ではなく、法の趣旨に照らし合目的的に限定解釈する必要がある。外観上、本件商標は図形と文字部分が不可分一体に結合したものである。さらに、文字部分はローマ字のみ同書同大同間隔で表されていて不可分一体であり、「INTEL」は文字列の中に埋没、分離して観察すべき事由は無い。称呼上も、本件文字部分から「インテラセット」の一連の称呼が生じ、途中で区切らねばならないような特段の事情は見出せない。全体で一連の造語であるから、特定の観念も生じない。本件商標に接する者が被告を客観的に把握し、想起又は連想することが無い以上、被告の人格的利益が害されるおそれはない。よって同号にいう「含む」商標には該当しない。

〔被告の主張〕
本件商標の図形部分と文字部分を常に一体のものとして把握・認識しなければならない理由は無く、むしろ文字部分「INTELLASSET」が自他役務の識別標識として取引にあたる場合が多いとみるのが相当。当該部分からは「インテル・アセット」の称呼が生じうる。被告の略称として著名な「INTEL(インテル)」を含むものと評価されるべきである。文字の意味から「インテルの資産、財産」の観念を有する。
以上、本件商標はその構成から客観的に被告の著名な略称である「INTEL」を含むというべきである。

4.裁判所の判断
法4条1項8号該当性(著名略称を含む商標)の有無について

(1)基礎的事実関係
被告の略称である「INTEL」は、本件商標が出願された平成14年6月12日時点及び登録査定がされた同15年2月19日の各時点において、パソコン関連の商品及び役務を取り扱う業界においてはもとより、パソコンを職場や家庭等において使用する我が国の一般消費者の間においても被告の略称を表示するものとして広く認識されている。

(2)法4条1項8号における「含む」の意義の観点から、審決の当否の判断
同号の趣旨は、人格的利権を保護することにあるので、本件商標が、単に物理的に被告略称を「含む」状態を以って足りるのではない。その部分が他人の略称として客観的に認識され、当該他人を想起・連想させるものであることを要すると解すべきである。
本件商標の文字部分の各文字が同一の書体・同一の大きさ・同一の間隔で表されていることに照らすと、「INTELLASSET」の文字部分は外観上一体として把握されるのが自然である上、日本においてなじみのない語であり、一見して造語として理解されるものであり、特定の読み方や観念を生じないと解される。したがって、被告の略称である「INTEL」は、文字列の中に埋没して客観的に把握されず、被告を想起・連想させるものではないと認めるのが相当であるので、本件商標は法4条1項8号には当たらない。
  なお、原告が登録した冒頭の「I」と中間部分の「A」とを大文字とした別件商標があることから、原告は「INTELL」と「ASSET」の部分に分割して認識していたとの被告主張があるが、原告商号は株式会社「インテラセット」であって、片仮名表記から「インテル」と「アセット」に分割して認識できず、さらに本件商標においては「A」の文字が他の文字に比べて大きくなく、「ASSET」の部分を独立して認識させる表記でないこと等から被告の上記主張は採用できない。

◎ 参考

原告が所有していた上登録商標(登録第4651763号)は、
法4条1項8号該当性を肯定し無効が確定した。
(知財高裁平成19年(行ケ)第10113号 平成19年12月20日判決)