法改正・判例等の情報

「音」は商標になる?!

現在、日本の特許庁で商標として登録できるものは、決まった形がある文字や図形だけです。
立体でも構いませんが、目で見えるものに限られていますし、目で見ることができても、動くものや単なる色彩では決まった形が無いので登録できません。
そして耳で聞く「音」や、鼻で嗅ぐ「におい」なども当然ながら商標として保護を受けられません。

けれども現実には、例えばテレビコマーシャルでおなじみの「ヒ・サ・ミ・ツ」などは音を聞いただけで「久光製薬」のものだとわかる人は多いでしょう。
また、映画の始まる前のライオンの吼え声を聞いただけで米国MGM社の配給だとわかる人も多いことでしょう。

更に、少しファッションに興味のある方ならば、真っ赤な靴底のハイヒールを見ただけで婦人靴ブランドの「クリスチャン・ルブタン」の靴だとわかることでしょう。
このように、その音を聞くだけ、その動きや色を見るだけでどこの会社の商品やサービスであるかわかることは多いのではないでしょうか。
商品やサービスの出所がわかるということは、実際にはその音や色が商標的機能を果たしているということです。

海外では、「動き」「ホログラム」「輪郭のない色彩」「位置」「音」「におい」など、新しい商標が保護されるようになってきました(後掲ご参照下さい。また、当HP外国情報にカナダの例を掲載しました)。

自由貿易協定(FTA)などで、これら新しい商標を保護対象とする条項が盛り込まれたり、商標法に関するシンガポール条約(商標出願手続の国際調和及び簡素化のための条約)にて新しい商標の特定方法についての規律が定められ、それに基づく商標登録出願のモデル様式も策定されたりしています。

我が国でも、FTA交渉やTPP交渉参加が取り沙汰されている現在、経済産業省の諮問機関で「動き」「ホログラム」「輪郭のない色彩」「位置」「音」についての商標登録制度について検討を重ねていて、法改正案を本年の国会に提出する方針です。ただし、変化しやすい「におい」については引き続き検討、特定し難い「触感」「味」は見送る方針のようです。

新しい商標の類型と海外における登録例

1.視覚で認識できるもの
・「動き」の商標:テレビ画面に映し出される動く平面商標・動く立体商標
登録例(米国)20世紀FOX社の映画の最初に出てくる動く商標
    

・「ホログラム」の商標:物体にレーザー光などを当て、もとの光との干渉パターンを感光材料に記録し、これに別の光を当てて物体の像を再現する方法等を利用して図形などが映し出される商標
登録例(米国)AmericanExpress社のクレジットカードに付されたホログラム

 

・「輪郭のない色彩」の商標:色彩のみの商標。単一の色彩のものと、複数の色彩を組み合わせたものがある
登録例(米国)女性用靴ブランド、クリスチャン・ルブタンの赤い靴底

・「位置」の商標:図形などと、それが付される位置によって構成される商標
登録例(欧州)サンフォード社の筆記用具に赤い輪(ロットリング)を特定位置に配置


2.視覚で認識できないもの
・「音」の商標:音楽・音声・自然音などからなる聴覚で認識される商標
登録例(米国)商品「動画のフィルム」等にMGMのライオンの吼え声からなる音(当HP外国情報もご参照下さい)
(欧州)商品「医療目的の食餌療法用食品」に久光製薬の「HISAMITU」からなる音
    

・「におい」の商標:嗅覚で認識される商標
登録例(米国)商品「糸」に施された「プルメリアの花の香り」
   (英国)商品「タイヤ」に「バラの花を連想させる芳香」

・「触感」の商標:触覚で認識される商標
登録例(米国)ワインボトルの表面のベルベットの触感
          

「味」の商標:味覚で認識される商標
実際の登録例はほとんどありません。
参考・拒絶事例(欧州)

いちごの人工的な味からなる商標(商品「薬剤」)